Column 8 西荻の人
安藤久蔵さん100歳講演会 【前編】
「西荻一の“スゴイ人”は誰？」と聞かれたら、私はまず「安藤久蔵さん」と答えるでしょう。それはなぜ？ かという理由をお話する前に、まずは安藤さんの略歴をご紹介します。
安藤久蔵さんは明治44年（1911年）2月5日生まれの御歳100歳。銚子中学から慶應義塾予科、慶應義塾大学理財科を大正11年卒。三井物産を経て永年、自家の水産会社を経営していました。
安藤さんは名だたる山々を制覇してきた有名な登山家でもあり、現在は西荻の善福寺にある「アロマフレッシュ」という珈琲豆卸売専門店の店主さんです。これだけではまだ安藤さんの素晴らしさはお伝えしきれません！
かくいう私も安藤さんを本当の意味で「スゴイ」と感じたのは、安藤さんとお会いしてからなのです。
安藤久蔵さん100歳講演会開催の経緯
2011年6月11日（土）、西荻・まちレストラン「かがやき亭」で行われたNPO法人アジア太平洋資料センター（PARC）主催「自由学校特別講座」『100歳のフェアトレーダーに生き方・働き方を学ぶ』に参加しました。
PARCとはアジアと世界の人々との繋がりを調査研究し、政府提言や情報発信などの活動をしている団体。社会的課題解決に向けてさまざまな講座を行っており、今回の講演会はその特別編。
講師はPARC自由学校の講師を依頼されていた白田博彦さん。
日本各地の生産者と消費者を結ぶ食材販売店「ニッコリーナ」のクリエイティブディレクター兼コミュニティデザイナーであり、今回は講師だけではなく企画も担当されています。
白田さんは以前より地域に根ざす人の知恵をどうしたら活かしていけるかと考えていたそうです。東日本大震災を経てその思いは強くなり、地域の魅力的なおじいさんおばあさんの話を聞く「じばんばなしを聞く会」を独自に企画していました。
そんな折にPARCから特別講座の話があり、ちょうど良い機会なので「じばんばなしを聞く会」の第１回目を特別講座として開催することになりました。
85歳で珈琲専門店を始めた理由
講演会が始まる前、安藤さんは私たちの前で珈琲をたて、淹れたてのコーヒーを参加者全員に振舞ってくださいました。珈琲をたてるその姿はとても100歳とは思えません。味も格別！とてもおいしかったです。珈琲の余韻に浸っている頃、講演会がスタートしました。
「安藤さんは、今から15年前の85歳で西荻の珈琲屋を始めました。まずそこからお聞きしましょう。」
白田さんのお話に思わず楽しくなる。85歳で珈琲屋さんを始める？普通なら考えない。もう隠居してゆっくりと暮らしたいと思う頃、少なくとも私ならそう思ってしまう。どんな理由があったのか、安藤さんはその理由についてこう語られました。
「私はね、元々漁業をしていたんです。でも、大学時代（慶応義塾大学）に山岳部へ入っちゃったのがきっかけで、世界の山を歩くようになった。ケニア、コロンビア、アンデス、キリマンジェロなどの山々を登った時、ポーター（荷物運び）として現地の人と出会ったんだ。
それで彼らと仲良くなって、1年に1度は必ず会いにいくという約束をした。そうやってそれから長年親交を深めていったんだね。彼らは珈琲農園をしていたのだけど、珈琲豆は先物取引だから彼らのへのマージンは販売価格の1/500にしかならず、作れば作るほど赤字なの。だから、私は彼らから『日本は消費国だから、あんたが売ってくれ』と頼まれ珈琲豆を売るようになったんです。」
儲けようなんて爪の先ほども思わず、珈琲農園の人に頼まれて始める。なかなかできるものではありません。それ以前に、信頼されていなければそんなお願いをされることもなかったはず。安藤さんのすごさはその辺りにあるのかも。安藤さんの人柄にひかれ始めていました。
＜後編＞へつづく
自由学校特別講座「100歳のフェアトレーダーに生き方・働き方を学ぶ」
主催：NPO法人アジア太平洋資料センター（PARC） PARC自由学校
http://www.parc-jp.org/
企画・講師：モノのデザイン。コトのデザイン。つながりのデザイン。
白田博彦さんへのお問い合わせは：maxhakuter＊onyx.ocn.ne.jpまで。
(送信時は＊をアットマークにしてください)
会場：西荻まちレストラン かがやき亭
http://www.h6.dion.ne.jp/~momo3/rest.html■珈琲豆卸売専門店『アロマフレッシュ』
住所：東京都杉並区善福寺1-3
電話：03-3395-1854
営業時間：12:00-7:00（配達のために時々閉まっていることがあります）
営業日：日・水・金曜日
