特集コラム

Column 3 匿名西荻窪

2009/12/25

西荻流、シェフの聞き間違い煮込み

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近年、西荻にはどんどん新しいお店がオープンしています。
中華、フレンチ、居酒屋さんに、おしゃれなBAR。小物屋さん、洋服屋さんに着物屋さん。
そんな新しいお店の多くはとても若い人が店主だったりします。

西荻の新しいお店は、見た目が今風でもどこかにピリッと個性があって、何にも似ていない西荻らしさがあります。みんな無難にお店を経営するよりも、一歩前に踏み出して自分の考える最良のサービスを追い求めている、という雰囲気。

たとえば、ある焼き鳥屋さん。焼き鳥はもちろんおいしいのですが、新鮮なマグロの仕入れにとてもこだわって、マグロの料理も出しています。

たとえば、なにげなく覗いた洋服屋さんはすべての洋服が手作りのものだったり。

そんな、オープンしたばかりのお店には良い所がたくさんありますが、いかんせん、不慣れだったり、気になる部分があることも否めません。

僕が頻繁に通うある飲み屋さんは料理がおいしく、元気もよく、値段が安くてとても気に入っています。
店主は30代前半で僕と同じくらい。
ホールには男の子が何人かいて、みんな店主よりずっと若いです。
そのお店に通うようになってすぐに気になったのは、注文をすぐに忘れることと、注文とは違ったものが出てくること。

食べたかったものを待ちに待ったのに、忘れられていたときにはやっぱりがっかりしてしまいますし、注文とは別のものが出てくると「これでいいですよ」と言いつつも「またかぁ」という気持ちは拭えません。

でも、しかし、きちんとおいしいものを出すお店というのは注文外のものが出てきても、それもやっぱりおいしいです。
たまたま間違えられたことで、自分の意思ではなかなか注文しない料理の味を知るということも、それはそれで楽しいものです。

どこの街のレストランでも「シェフの気まぐれサラダ」というようなメニューを見かけることはありますが、西荻のこのお店はさしずめ「シェフの聞き間違い煮込み」「ウェイターのど忘れ焼き、忘却ソース和え」などが人気メニューといったところでしょうか。

そんなふうに間違いやど忘れの多いこの店ではときに小さなうれしいハプニングが起こることもあります。
ある料理を注文したときに
「わざび醤油とポン酢、どちらにしますか?」
と聞かれました。
すぐに僕はわさび醤油を選びました。
しかし、店員さんが調理場に戻ったあとで、一緒にいた友人に「ポン酢がよかった」などとつぶやかれ、「そうかひとりで勝手に決めてしまった」などと反省しました。
でもしばらくすると、さきほどの店員さんがやってきて「お待ちどうさま!マグロのほほ肉のあぶり、ポン酢でどうぞ!」と大きな声で言いました。
僕たちが「あ!」と声をあげるとその若い店員さんは自分がまた間違えてしまったことにすぐ気がつき、「すみません、間違えましたよね?」とひと言。

この日の間違いはとても素敵で、僕たちは思わず
「いいんです、いいんです、僕たちよりも正しいです」
なんてことを言って笑い合いました。

西荻に何十年も前からあるようなシブ味の効いたお店だって、かつてはきっと不慣れで手探りだったはず。
新しいお店も、こんなふうに足を運ぶうちに、間違いやど忘れもなくなって、しっくり、きっちりとしたお店になんていくのかな、などと思いながら間違いとど忘れを楽しんでいます。

(了)

文・取材 / 本田まさゆき
青色申告会

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