特集コラム

Column 1 西荻窪のおみせ

西荻窪のおみせ
2011/11/30

珈琲店 どんぐり舎

等身大を大切にする珈琲店 どんぐり舎

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「珈琲店は等身大が一番いいと思うんですよ」とはチェット・ベイカー似の店長、河野三郎さんの言葉だ。75年創業の珈琲店『どんぐり舎』は、店長の言葉どおり等身大。

目に映るのは古い日本画、壺や石などの置物。それらはどこか別のところから持ち込んだというよりは、店の中から自由に溢れ出てきたかのようで、どんぐり舎にごく自然に溶け込んでいる。

そんな、気取らず、飾らず、背伸びもしない、ありのままの姿に吸い込まれるように、西荻窪に住む多くの人がどんぐり舎の入口の扉を開く。

癖になる空間

店に訪れる人々も等身大だ。思い思いにくつろいでいる。店内には長居してもいいよ、という空気があり、「自由にくつろいでほしい」というどんぐり舎のコンセプトが朗らかに伝わってくる。

本棚には絶版になった小説や漫画が並び、ゆっくり小説を読むもよし、漫画を読むもよし、癖になる珈琲の味と相まって、何度足を運んでも飽きがこない。

ジャズ喫茶的な側面もあり、BGMは店長が若いころから愛していたジャズの数々。レッド・ガーランド、ハワード・マギーなど、聴きやすく、軽やかでいて奥が深いミュージシャンたちだ。音楽に耳を傾けているだけでも面白い。

ありのままでいることをやさしく肯定してくれるどんぐり舎という空間の中で珈琲を飲んでいると、鮮明な視界が徐々にぼやけて生活の忙しさが嘘のように薄れていく。日常と非日常の境目がなくなり、自分のためだけに作ってもらえたと思える時間の中に身を置くことができる。

思い出に残る味

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オススメされたほろ苦ブレンド(480円)とモカブレンド(500円)はジャズのように深みのある味。苦みが強く、口に含むたびに胸の奥までじんと染み入る。珈琲もまた気取りがない味で嬉しくなる。特にほろ苦ブレンドは不思議と哀感のある味だ。ぜひ目をつむりながら堪能してほしい。

個人的な想いを書けば、ほろ苦ブレンドを飲んでいるとどんぐり舎の歴史を覗いている気持ちになる。

それは、人々の触れ合いの場としてもあるどんぐり舎とは、たくさんの笑顔と別れの記憶の積み重なりによって出来ていると感じるからかもしれない。その歴史が、ほろ苦ブレンドのほろ苦さなのだと思えてくる。

青春の記憶のような苦い味。それは忘れられなく、忘れたくない味なのだ。少なくとも僕は忘れないだろう。帰り際の「思い出に残る味が出せていたら嬉しいですね」という店長の言葉が心地よく響いた。

珈琲店 どんぐり舎
住所:東京都杉並区西荻北3-30-1
電話:03-3395-0399
営業時間:10:30-22:30
定休日:不定休

文・取材 / 田中喬史

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